飲んでも安全な歯磨き粉『オーラルピース』を通じ、障がい者の仕事や未来に新しい風を送り込む― 株式会社トライフの手島大輔さんをインタビューしました

オーラルピースを手に、世界の障がい者たちの就労と収入向上を目指す手島さん

 

 

 

 

 

 

こんにちは、メディウェルギャラクシーの安部です。

 

 

 

 

 

 

近年、医療・福祉の業界で大きな話題を呼んだ製品があります。

 

 

 

 

 

 

それは、虫歯菌・歯周病菌・誤嚥性肺炎原因菌を殺菌しながら、飲み込んでも安全な歯磨き粉『オーラルピース』。オーガニック原料で作られたこの製品は、瞬く間に多くの施設や家庭で使われるようになりました。

 

 

 

 

 

 

今回お話を伺ったのは、その仕掛け人・株式会社トライフの代表取締役、手島 大輔さん。

 

 

 

 

 

「『オーラルピース』を軸として障がい者の未来をもっと明るいものにしたい」、そう話す手島さんの”熱い”想いにスポットを当てました。

 

飲んでも(誤嚥しても)安全。天然由来の歯磨き粉「オーラルピース」で、誰でも安心して口腔ケアを行える

 

②オーラルピースとは

天然由来原料100%、低刺激の口腔ケア健康ジェル「オーラルピース」

 

 

 

 

 

 

きっかけは、我が子の障がい・・・障がい者の就労と収入の問題を解決するため、必死で走り続けた日々

 

 

 

 

 

―これまで商社やコンサル会社に勤務しバリバリのビジネスマンだった手島さんが、障がい者の雇用やオーラルピースの製品化に携わるようになった経緯を教えてください。

 

 

 

 

 

 

手島「きっかけは、私の子どもの障がいです。

 

 

 

 

 

 

私には3人の子どもがいます。長男は生後間もなく、そして次男は3歳の頃に障害の診断を受けました。

 

 

 

 

 

 

親として、2人がどんな未来を歩んでいくのか、それをどう支えていけるのか・・・悩みました。

 

 

 

 

 

 

そんな中で偶然、障がい者の就労と収入に関する問題について、知ったのです。

 

 

 

 

 

 

一般就労できない多くの障がい者が就労によって得ることのできる収入は、本当にごくわずか。その収入だけでは、とても自立して暮らすことはできない。

 

 

 

 

 

自分の子どもだけでなく、同じように悩み苦しんでいる人たちに対して、何かできないかと模索するようになりました。

 

 

 

 

 

 

分野が何であっても、私は変わらずビジネスマンです。

 

 

 

 

 

 

そこで出会ったイタリアの天然ハーブ農場と協力し、オーガニック化粧品事業を立ち上げる中で、障がい者の方々が化粧品づくりの工程に参画し収入を得られるモデルを構築しました。

 

 

 

 

 

 

その後も、ボランティア団体を立ち上げに参画し、化粧品事業と並行して運営していました。障がいのある方々がものを作り、売るのをお手伝いすることで、収入増や自立を支援する活動団体セルザチャレンジの運営。これも、多くの方々の暮らしを支援することにおいて、役に立つことができたと考えています。

 

 

 

 

 

とにかく毎日、必死でした。それだけ、この就労と収入の問題は、子どもたちの未来にとっての大きな壁として、自分の前に立ちはだかっていたんです。」

 

 

 

 

オーラルピースを手に、世界の障がい者たちの就労と収入向上を目指す手島さん

明るい表情と力強い言葉でオーラルピースと障がい者の未来について語ってくれた手島さん。だが今日に至るまでには、数々の苦難の道のりがあった。

 

 

 

 

 

 

『生きること』に直面し、多くの仲間と共に挫折を乗り越え『オーラルピース』誕生。新たな障がい者の就労・自立モデルを確立した。

 

 

 

新事業にボランティア、いずれも順調に進んでいたはずでしたが、ある時期を境に、手島さんを取り巻く環境は一転しました。

 

 

 

手島「リーマン・ショックによる世界的な経済の停滞で、私自身の収入が無くなってしまったんです。」

 

 

 

 

 

 

―本当に、ゼロになってしまったということですか?

 

 

 

 

 

 

手島「そうです。生活費すら、まかなえないという状況になってしまいました。

 

 

 

 

 

 

妻と子どもがいる中で途方に暮れながらも、ふと思ったんです。

 

 

 

 

 

 

『生きていかなきゃいけないんだ』・・・って。

 

 

 

 

 

 

崖っぷちに立たされて、初めて気づきました。これまで私は、安定して収入を得ることができていた。『生きる』ということをリアルに捉え切れていなかった。でも、『生きていく収入』が無ければ、自分も家族も生きていけない。

 

 

 

 

 

 

自分自身の収入が無くなることで、自分の中の『生きていかなきゃ』という決意が確固たるものに変化したんです。

 

 

 

 

 

 

それからですね。障がい者の方々にとっても『生きていく収入』を得られるような環境をつくる必要がある。それが彼らの自立や、未来の選択肢を増やすことにつながるんだ。そんな信念のもと、再び始動することになったんです。

 

 

 

 

 

 

私と同じように、障がいを持った子どもを育てている親たち。私たちの状況に理解と共感を示してくれる人たち。そうした方々に声をかけて、力を合わせて障がい者の未来を作っていこうと考えました。

 

 

 

 

 

今ではそうした方々が40名ほど、プロボノのメンバーとして事業を支えてくれているんです。」

 

 

 

 

 

「プロボノ」とは

プロボノ(Pro bono)は、各分野の専門家が、職業上持っている知識・スキルや経験を活かして社会貢献するボランティア活動全般。また、それに参加する専門家自身

Wikipediaより)

 

 

 

 

 

 

―そうして『オーラルピース』が生まれた?

 

 

 

 

 

 

手島「私の父ががんを患って口の中のトラブルに悩まされる中、口腔用殺菌剤を誤飲してしまったということがありました。病気で弱った父は、それでお腹を壊してしまったんです。

 

 

 

 

 

 

その様子を知って、ふと『飲み込んでも平気な歯磨き粉があれば、誤飲・誤嚥の恐れがある患者や高齢者でも、安心して口の中を清潔に保てるんじゃないか』と思いました。

 

 

 

 

 

 

このアイデアをもとに、当時、『強い抗菌効果を持ちながら、飲み込んでも体に害がない成分』の研究に取り組んでいる方とのつながりで、試行錯誤の末に『オーラルピース』の製品化にたどり着くことができたのです。

 

 

 

 

 

 

『オーラルピース』の生産と販売には、数多くの障がい者の方々が携わっています。たとえばこのパッケージの印刷や梱包、製品の発送、さらには一部製品の生産までも、彼らが一つひとつ、丁寧に作業を行っています。そして各地での販売を全国の障害者就労施設が担っています。そして1本あたりの販売で200~350円が彼らの収入になります。」

 

 

 

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オーラルピースを販売している小売店や福祉施設への梱包・発送も、障がいをもった方々が作業を行っている。現在のラインナップは歯磨き粉とマウスウォッシュ。

 

 

 

 

 

 

障がいを持っている人たちに、一つでも多く、未来の選択肢を届けたい

 

 

 

 

 

―『オーラルピース』を軸として、『事業すべての流れの中に、障がいを持った方々を就労の場として組み込んでいく』という本来の目的を実践しているわけですね。

 

 

 

 

 

 

手島「そのとおりです。

 

 

 

 

 

 

私が今、第一に考えていることは『障がいを持っている人の未来の選択肢を一つでも多く作っていきたい』ということ。これに尽きます。

 

 

 

 

 

 

1人でも多くの障がい者の方々に、いろんなパズルのピースを提供していきたいですね。」

 

 

 

 

 

 

―人とのつながりに支えられてきたという手島さんならではだと思います。手島さんも、障がいをもつ方々につながりを提供していくことで彼らの人生を支えていく、と。

 

 

 

 

 

 

手島「人生は人との出会いだと思ってますから(笑)。今は『自分たちで未来をつくっていかないと』という同じ想いを持っている仲間がいるし、オーラルピースの事業に携わってくれている数多くの障がい者の方々もいる。夢の実現まで熱意を絶やさず走り続けるしかないですね。」

 

 

 

「オーラルピース」を使った障がい者の雇用創出プロジェクトが横浜ビジネスグランプリ2014で最優秀賞を受賞

 

「オーラルピース」ニュースリリース

 

 

 

信条は『できるかできないかじゃない、やるかやらないかだ』。日本から、オーラルピースの事業モデルを世界に向けて発信したい

 

 

―今後の展開として考えられているイメージがあれば教えてください。

 

 

 

 

 

 

手島「イメージというより、明確に事業計画として持っているものがあるんです。自分の使命を果たすために、事業計画の推進に全力を注いでいます。

 

 

 

 

 

 

具体的には3つです。

 

 

 

 

 

 

この製品を、日本国内そして海外にいる、より多くの人たちに届けたい。

 

 

 

世界中の小売業者や医療機関、福祉施設と広く連携を取って、口腔ケアにお悩みをもった方々すべてがオーラルピースを便利に手に入れられるように、置いていただく場所を拡大しています。

 

 

 

 

次に、ニーズに応えて製品ラインナップを増やすということです。口腔ケアだけでなく、例えば皮膚のケアであったりとか、これまでのノウハウを生かして多彩な製品をリリースし、多くの人の悩みを安全に解決していきたいと考えています。

 

 

 

 

最後に、繰り返しになりますが、オーラルピースの生産から販売までを通して一人でも多くの障がい者の方々が社会参加でき、さらに収入の向上を実現できるよう、事業モデルの推進と拡大に力を尽くす、ということです。」

 

 

 

 

 

 

―さっきおっしゃっていた『障がいを持っている人の未来の選択肢を一つでも多く作っていきたい』ということですね。

 

 

 

 

 

 

手島「そうです。一人ひとりに、いろんなパズルのピースを渡していきたい・・・いやむしろ、私にはそれしか出来ない、と言ったほうが正しいかもしれません(笑)。

 

 

 

 

 

 

ある先輩が私に授けてくれた言葉で『できるかできないかじゃない、やるかやらないかだ』というのがあって。

 

 

 

 

 

私はそれを自分の信条としているんです。

 

 

 

 

 

 

世界一の超高齢社会となるこの日本から、今までにない全く新しいグローバル・ソーシャル・カンパニーとして、世界に向けて発信する。

 

 

 

 

 

 

そして日本初の革新的な技術によって生まれた『オーラルピース』を届けることで、世界中の障がい者の就労モデルを変える。

 

 

 

 

 

 

これらのことを『やる』と決めています。

 

 

 

 

 

 

日本国内だけでなく世界の障がい者の方々が、幅広い選択肢の中から自分の未来を選ぶことができる・・・そんな世の中にしていきたいですね。」

 

 

 

オーラルピースの外装はアルミを使用。

 「オーラルピース」は衛生面への配慮からアルミ製の容器を使っている。登山や災害時、宇宙飛行などへのニーズもある。

 

 

 


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