人と情報をつなぐプラットフォームとなる―株式会社ヒューマン・ヘルスケア・システム代表・松井直樹氏インタビュー【後編】

施策や制度だけでなく、地域のコミュニティ育成や文化の醸成を
――2025年には団塊の世代が75歳以上を迎え、人口に占める高齢者が実に4人に1人という割合に達すると言われています。
松井「いわゆる2025年問題を論じる前に、我々はまだやるべきことがある、そう思っています。なぜなら2025年というのは、それが高齢者の割合のピークということではない。始まりに過ぎないのですから。
つい2025年を焦点に置きがちですが、今我々が考えなくてはならないのは短期的な制度や施策だけではなく、そこからさらに5年、10年先にも持続することが可能な取り組みなのです。
それはつまり、どのようにして高齢者の方々に、若い世代と同じように社会的資源となっていただくことができるか、ということではないでしょうか。
高齢者の増加=負担増は、事実である一方で、そこに捉われすぎている方が多いようにも感じます。
確かに現役世代と同じような生産力をもつのは難しいかもしれません。ただ私は何も途方もない話をしているわけではないのです。
たとえば町内会の役員でもいいし、通学路の誘導、周辺の住民たちとの間で気持ちよく挨拶をするだけでもいい。高齢者が地域の中で活動や交流を深めていくことで、住民たち同士のふれあいが生まれる。その地域に、生きたコミュニティが形成されますね。
一人ひとりでは難しいことでも、コミュニティの力を借りることで生産性を上げることができるのではないか。こうした価値観が浸透することで、『高齢者の文化』が醸成されるのではないか。そう考えています。」
――国際化が進み、今後はコミュニティの中に外国の方々が加わるという場面も増えてきますね。
松井「もちろん、今もすでに外国人が地域の中で暮らしているという場面は数多く見られます。
異なる土地・言語・宗教の中で育った方々と同じコミュニティで文化の醸成していく・・・という点では、海外に学ぶことは非常に多い。是非参考にしていただきたいですね。
たとえばオランダ。ここでは『インテグレーション(統合化)』の考え方が非常に進んでいます。
インテグレーションとは異なる複数のコミュニティが互いの文化や宗教を尊重しながら共存を実現させている状態のこと。1つの価値観で他のコミュニティを塗りつぶしてしまう『統一』とは全く異なるものです。
今後はよりいっそう海外から移住される外国人が増え、彼らもまた地域でコミュニティを生み出すでしょう。そこでお互いの文化が異なるからと隔てるのではなく、相手を尊重し認め、ともに暮らしていくという未来の姿を積み上げてほしいですね。」
同社編集委員の大江氏も同席。
原則に立ち返るときが来た。超高齢社会を迎えて―
――2015年4月、介護保険制度・介護報酬の改正により業界はさらなる変化の時を迎えていますが、どうお考えでしょうか?
松井「原点に立ち返らなくてはならないときが来たのだろうなと。そう思っております。
医療、介護、制度、報酬、施設・・・役割がさまざまに縦割りされた今の仕組みを見直して、垣根を外していくようなことが必要なんじゃないかなと。
自分の事業を継続する、つまりビジネスとしてきちんと持続する経営をしながらも、医療や福祉の理念を貫く意思を持つこと。
『人を救いたい』『人を支えたい』そうした気持ちに立ち返り、医療や介護に従事する方々が主体となって、地域でお互いを見守り合う環境を整えること。
我々の定期誌の名にある『コミュニティ』は、まさにそうした考えを反映したものです。今後も『人』と『情報』をつなぐプラットフォームとして、この業界で日本を支えている方々の力になっていきたいと考えています。」
株式会社ヒューマン・ヘルス・ケアシステムではセミナー開催、書籍・隔月誌「シニア・コミュニティ」の発行を行っています。
詳細は同社公式ホームページよりご覧ください。