介護職員のワークライフバランス

以前、医療従事者のワークライフバランスというテーマでその現状や課題についてを紹介した。
今回は介護関連職にスポットして、同じくその現状と課題を考えてみたい。
「ワークライフバランス」とは
「仕事と生活の調和」のこと。人々の働き方に関する意識や環境が社会経済構造の変化に必ずしも適応しきれず、仕事と生活が両立しにくいという場面が多くみられるようになった。誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域などに自分の時間を充てられる健康で豊かな生活ができているか。社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならないと内閣府においても掲げられている。
また、働く人それぞれの事情に合わせて多様な働き方を認めるダイバーシティとも深いつながりがある。近年では、こうしたワークライフバランスやダイバーシティの拡充による経営への好影響についても声が聞こえることが多くなった。
介護の現場におけるワークライフバランス
よく耳にする介護職の就労環境からイメージされるのは、長時間に渡る勤務やスタッフ不足による少ない休日、夜勤などのほか、労働時間や負担に対する賃金の相対的な低さが挙げられるだろう。
厚生労働省を始め、行政や自治体、施設単位でもこうした現状に対する改善のアプローチはさまざま行われており、中には介護職のワークライフバランスを実現することのできる施設や自治体の事例も見られるようになっている。
また2015年4月の介護報酬改定も、施設運営にとっては非常に厳しい改定となったものの、その方針は介護職の就労環境の改善にスポットが当てられた面もある。
これからの日本を支える欠かすことのできない業種だけに、その労働に十分見合った待遇の整備が期待される。
介護に関わる職種は介護士だけでなく、作業療法士や理学療法士、看護師、栄養士、調理師、ドライバーなどさまざまである。全体を見ると、特に栄養士などでは顕著だが、女性の割合が多めとなっており、医療施設における看護師のケースと同様に結婚・出産・育児をキッカケとした休職や離職は依然として多く見られる。
しかし一方で女性が多いからこそ、現代のようにワークライフバランスやダイバーシティが叫ばれるようになる以前から、女性職員の結婚・出産・育児への組織的な理解があったという施設も多いという。こうした施設ではそもそもスタッフの間で価値観が浸透しており、出産時の休職や育児期間の時短勤務、さらには子どもの幼稚園や保育園での行事に合わせたシフト対応などの取り組みが積極的に導入されている。
介護の現場におけるワークライフバランス尊重のインセンティブ
最近では特に、仕事と育児の両立を実現しながら自身の人生を豊かに過ごすということが長期的に見て施設経営にとってメリットが大きい(経験のあるスタッフ、優秀なスタッフが時短であっても在籍し続けてくれることのほうが良い)という判断がなされるケースも増えてきた。
施設が求める人材を新規で確保するのは、人手不足の現在においてコストやリスクが大きい。
それよりも、職場のルールを柔軟にして自分自身が働きやすいバランスを保ちながら勤務を続けてもらうことで、有能な人材が施設に定着して勤務を継続することができる。
そして就労環境の充実は、そのまま施設のブランドにもつながる。人材不足の中にあっても、その働きやすさが他の施設との差別化につながり、新たな人材の獲得にもつながる。
スタッフが皆イキイキと働いていれば施設の雰囲気やコミュニケーションも良くなり、好循環が生まれる。
まとめ
女性の割合が多い傾向がある点において、制度や世論がサポートする以前からワークスタイルの工夫を続けてきたという施設は多い。
こうした事例を広く共有し実践していくことで、冒頭に述べたような介護職に関する厳しい労働環境のイメージを払拭し、ワークライフバランスの尊重される職場づくりの実現が進んで行くのだろう。