NPO法人「地域精神保健福祉機構コンボ」インタビュー【その1】

地域精神保健福祉機構コンボの丹羽様にインタビュー

 

 

こんにちは! 医療・福祉系情報発信ステーション「メディウェルギャラクシー」編集長の安部です。

 

 

今回のインタビューのお相手は、NPO法人「地域精神保健福祉機構コンボ(以下コンボ)」さん。

 

 

精神疾患をもつ当事者やその家族たちが主体的に生きていくことができる環境づくりを目指して2007年から活動しており、月刊誌「メンタルヘルスマガジン こころの元気+(プラス)」発行や、年に一度の「リカバリー全国フォーラム」主催など、当事者やその関係者に向け精力的な活動を続けています。

 

 

数々の取り組みに込めた熱い想いを、設立当時からのメンバーである丹羽 大輔さんにお話しいただきました!

 

 

※本記事では、精神疾患をもっている人のことを当事者と記載します。

 


【NPO法人地域精神保健福祉機構コンボ
(Community Mental Health & Welfare Bonding Organization:COMHBO)】
前身団体「全家連」の運営メンバーを中心に、2007年1月NPO法人格取得。同年3月に「メンタルヘルスマガジン こころの元気+(プラス)」創刊。「リカバリー全国フォーラム」や「こんぼ亭」を主催するほか、全国でさまざまなイベントを開催。また、当事者とその家族向けの書籍出版も行うなど、幅広く活動している。
代表理事 大島 巌(日本社会事業大学社会福祉学部教授)
共同代表理事 伊藤順一郎 (独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所部長)
共同代表理事 宇田川 健 (NPO法人地域精神保健福祉機構共同代表)


 

 

コンボ設立への想い

 

 

―コンボを立ち上げるとき、精神疾患に対してどう取り組んでいこうという想いをお持ちだったんですか?

 

 

 

丹羽「精神疾患の関係団体は当時から色々あったんですけど、医師や薬剤に関する職能団体であったり、当事者の周辺が集まる家族会であったりが多くて。“職種や立場にあまりこだわらず、メンタルヘルス全体に対して取り組んでいる全国団体”というのが少なかったんです。それで、自分たちでやっていこう、と。」

 

 

―メンタルヘルス全体というと、かなり大きなテーマですよね…。

 

 

丹羽「そうなんです。だからこそ、私たちがメンタルヘルスとどう向き合うのか、その柱となる考え方が必要でした。それが無いと活動の軸がブレてしまいますからね。かなり深い議論を重ねて、とある考え方にたどり着きました。」

 

 

―それは?

 

 

丹羽「その前に、安部さんは『リカバリー』という言葉を聞いて、どんなイメージをもたれますか?」

 

 

『リカバリー』ですか?
うーん…、回復するとか復帰する、元通りになる、そういうイメージですね。

 

 

丹羽「ええ、それが一般的だと思います。ですが、メンタルヘルスにおける『リカバリー』は、ちょっと違った意味合いがあるんです。

 

 

私が理解している『リカバリー』の意味合いは、当事者本人がもともと持っている夢や可能性をどんどん広げて伸ばしていける、自分の意思や希望を追求していけるプロセスのことなんです。

 

 

コンボではこの『リカバリー』という言葉を柱に、メンタルヘルスと向き合い、すべての活動を進めています。」

 

 

 

―マイナスからゼロに戻るリカバリーではなく、プラスに進んでいくイメージなんですね。

 

 

 

丹羽「うーん…いや、ちょっと違うかな。マイナスになることもあると思っています。プラスばかりではないんです。

 

 

先ほど、『プロセス』と言いましたが、プロセスなので、その間に良くなったり、悪くなったりすることもあるわけです。それだけではなくて、症状がよくなったりすると、社会のなかでの別の苦労が出てきたりして、それはそれで大変だったりします。

 

 

そうしたことを説明するとややこしくなるので、よく見られる光景をお話します。たとえば当事者が何かにチャレンジしようとすると医師や家族などの周りの人が止めてしまう、ということがよく起こります。それは当然、悪気があってやっているわけではなく。無理をして病気が悪化したり再発したりしてしまわないように、ケアするつもりで止めてしまうんですね。

 

 

それに当事者自身も、精神疾患をもっているという自覚からチャレンジする気持ちにブレーキをかけてしまうこともある。そうしたことが日常の中で繰り返されると、チャレンジすること自体を諦めてしまい、毎日が平坦なものになってしまいます。」

 

 

 

―再発で当事者がまた苦しむことを考えると、周囲がストップをかけてしまうのも理解できますし、難しいところですね。

 

 

 

丹羽「そうなんです。『再発は良くない』『再発しないようにしよう』というのはごく一般的な考え方で、何も間違っていません。

 

 

けれど一方で、当事者の目線では、周りも自分も『再発はダメ』だと言っているわけですから。もし再発してしまったら、自分はダメな人間なんだ…というふうに考えてしまいかねません。

 

 

それが『リカバリー』的に考えると『再発したっていいじゃないか。』という発想になります。先ほどもお伝えしましたように、良くなることもあるし、悪くなることもあるわけですからね。再発したらサポートするし、その再発から何かを学んで次に生かしていければいい、という。
当事者の可能性を信じて意思を尊重する。それが私たちの柱である『リカバリー』なんです。

 

 

コンボのオフィスの一角。「こころの元気+」編集作業中!

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コンボインタビュー【その2】へつづく。


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