薬剤師よ、大志を抱け!ドーピング特化の事業展開で薬剤師の新たな可能性を切り拓く、(株)アトラクの遠藤敦さんにインタビュー!

こんにちは!メディウェルギャラクシーの安部です。
今回は、株式会社アトラク代表の遠藤敦さんにインタビューを敢行しました。
『アンチ・ドーピング』に特化した事業を展開する同社ですが、その根底には『薬剤師の新たな未来を切り拓く』熱い想いが息づいています。
医療者として、また開拓者として走り続ける遠藤さんの今に迫りました!
アンチ・ドーピングに関する様々なサービスを提供
―まずアンチ・ドーピングに関する御社の事業についてお聞かせください。
遠藤「アスリートの中でも自分の専属医をつけていない方や、ドーピングに関して十分に知識をお持ちでない方など、様々な方がいらっしゃいます。
弊社ではそうしたアスリートの方々向けに、ドーピング防止に関する総合的なサポートを行っております。
一番わかりやすいのは、相談や指導、教育ですね。
ドーピング検査で引っかかる成分を含むものは、実は私たちの身近にたくさんあります。風邪薬や栄養ドリンクなど、日常的に使うものの中に禁止成分が含まれていて、そのために検査で失格になってしまう選手も毎年出ています。
そうならないために必要な情報をこちらからお伝えし、禁止成分を摂取しないようアスリート自身に知識として身につけていただくコンサルティングや指導を行っています。講習会、勉強会などの形で行うこともありますよ」
―なるほど。ほかにはどういった事業がありますか?
遠藤「まだ開発中のものになりますが、データベースを利用して、『この商品が禁止成分を含んでいるかどうか』ということがすぐに判別できるスマホアプリを提供しようと考えています。
禁止成分の名前は公開されているんですけど、それを含んでいる商品が何なのか、なかなか分かりづらいんですね。そこでアスリートが自分のスマホで禁止成分の有無を確認することができるようになったら、すごく楽になると思うんです。」
―コンサルにアプリ開発…幅広いですね。
遠藤「そうでしょ(笑)。幅広いと言えば、もうひとつ。当社の役員の一人が「アスリートへの挑戦状!!」と題したブログを運営しているんです。これも大事な事業のひとつです。
私たちが熱い気持ちでスポーツを愛し、最前線で戦うアスリートの方々の支えになりたいという想いを伝えるための重要な伝達ツールになっています。ブログを書いている風間自身も、全国レベルの舞台に立つアスリートなんですよ」
自転車大好きのスポーツマン!自分の強みを掛け合わせて、新たな道を開拓
―ドーピングに特化した薬剤師業務というのは、かなり珍しいジャンルなのではないかと感じました。
遠藤「そうですね。私も、もともとは国立病院に勤務している薬剤師でした。そこから街の薬局に転職して、その後はドラッグストア勤務や派遣など…いろいろな仕事を経て、自分の好きなスポーツという分野と、専門である薬剤とを掛け合わせたことができないかな…という考えから、今に至っています。」
―スポーツは何をされているんですか?
遠藤「自転車です。昔は自転車で千葉県を一周したり、100キロとか200キロとかをサーッと走りに行っちゃうくらい大好きなんです。今はなかなかそんな長距離を走る時間がないんですけど(笑)。
その延長でプロのレースを観戦したり、自転車競技の歴史を勉強したりする中で、ドーピングについて知るようになったんです。
自分が薬剤師として、大好きなスポーツの世界に関わることのできる一つの答えが『アンチ・ドーピング』だったわけです。まずは日本アンチ・ドーピング機構公認スポーツファーマシストとなり、事業としてアンチ・ドーピングに取り組んでいける基盤をつくり始めたという流れです」
―そうした事業企画の中で、薬剤に関する多くの職場に勤められた経験が生きているんですね。
遠藤「はい。もともと独立したいと思っていたので、そういう視点でも見ていましたね。」
アンチ・ドーピング事業のほか、アトラクが牛込神楽坂で運営している薬局『ラクトファーマシー』。
入り口ではスタッフ手描き(!)のアルパカのイラストがお出迎え。
今の自分を形作る、今は亡き『師匠』の教え
―独立しようという気持ちをもったのは、何かキッカケがあったんでしょうか?
遠藤「私、大学時代に自動車整備とかを行う車屋さんでバイトしてたんです。そこの社長が自分にとって師匠と言える人で、仕事とは・経営とは何か、ということを一生懸命に教えてくれました。まあ、聞いてる当時はよく分からなかったんですけど。
その師匠が、大学3年生のころに心筋梗塞で急に亡くなってしまったんです。
そこで初めて、師匠が教えてくれたたくさんのことと向き合うようになって。『自分、逃げてるなあ』って思うようになりました。
というのは、私は高校の頃から機械が大好きで工学系の大学にいたんですが、機械オタクだった僕には基礎の復習を退屈に感じちゃったんです(笑)。
だから、全然やったことのない化学の大学ということで薬学部に移りました。
でもその師匠の死をキッカケにして、自分が逃げ続けていたことを『悔しい』って感じるようになりました。師匠が教えてくれたことの大切さにも気づかなくて、本当に…。
それからしっかり勉強して、薬剤師になりました。自分でも助けられる可能性がある人なら、助けたい。そして、師匠が教えてくれた仕事や経営のこと、それを受け継いでいきたい。だから今、こうして事業を続けているし、まだもっと広げていきたいと思っています。
近いうちに海外にも進出しようと考えているんです。ドーピングは世界基準ですから、市場はどこにでもあります。
オリンピックなどの祭典には、開催地に経済効果を与えるという意義があります。現地で自分たちが活動することによって、その地の経済的な発展に貢献したい…ということを、アトラクのゴールの1つとして、イメージしています」
薬剤師よ、大志を抱け!
遠藤「こういうこと言うのは良くないかもしれませんが…、実は自分は薬剤師という職業に将来的なビジョンが描けなかったんです。50年後、自分も業界もどうなっているのか、勤めていてもそれが見えなくて。
私は独立することで自分の薬剤師としてのビジョンを見出しましたが、同じように悩んでいる薬剤師もいるんじゃないかと思います。
そんな方々に伝えたいです。たくさんミスした人が偉い世界って面白くない!?って。
薬剤師の世界は、ミスをしない、正確な業務を遂行することで評価される。もちろん大事だし当然のことです。けれど、今の医療技術や薬学の発展も、数多くの仮説と失敗の積み重ねで成り立っている面もある。
だから、今まで薬剤師がいなかったスポーツという世界で薬剤師が立ち位置を確立するには、一緒にできるだけ多くの可能性を考え、やってみて、検証してこうぜ!って思ってます。
そのためのミスは失敗じゃない、成長の機会なんだから。
ということで、一緒に何かやろうって仲間は常に募集中!です(笑)。
まとめ
いい意味で薬剤師らしからぬ遠藤さんの数々の実践には、実は語りつくせないほどの失敗の上に積み重ねられたものなのだそう。
苦しい日々を乗り越えてきたからこそ、今信じているものに向かって突き進む姿に強さを感じるのでしょう。
株式会社アトラクは、ドーピングに関する書籍『うっかりドーピング防止マニュアル』も発売しています。うっかり禁止成分を摂取してしまうのを避けるための、体系的な情報が詰まった1冊です。