「ゴール無き道」をひたすら進む。医療法人「白報会」グループの白(はく)理事長をインタビュー

こんにちは。メディウェルギャラクシーの安部です。
2000年、とある医療法人が設立されました。
名は「白報会」。それまで大学病院で勤務されていた白 昌善(はく まさよし)理事長が立ち上げたグループです。
白「ずっと前から、開業と事業展開のビジョンはあった。今はそれを実現に移しているところです。」
白理事長は静かに、落ち着いた物腰でそう話します。
法人設立以来、在宅医療を中心に、福祉施設や産後ケアなど続々と事業を広げている白報会。その根底にある信念と、これからのビジョンについてインタビューしました。
医療と福祉、それぞれの視点を兼ね備えたサービスが必要となると確信していた
白「設立時は在宅医療を事業の中心に据えていました。当時、在宅医療はまだ今のようには一般的じゃありませんでしたからね。一人で、いろいろ手探りで進めていました。」
―患者の自宅に医師が訪問し、患者ごとの個別の環境に対応しながら医療を施すのが在宅医療。当然ながら、そこで求められるものは従来の外来・入院診療とは異なってきますね。
白「これまでと同じような『医療』の視点だけでは、在宅医療で良いサービスは提供できません。そこには『福祉』という視点も不可欠。一番分かりやすい例が、地域の福祉施設やケアマネ、ヘルパー達との協力関係を築くことで、患者ごとの固有の状況に対応できる体制をつくること。こうした総合的な生活支援サービスの構築が求められるのは、在宅医療ならではですね。」
―その言葉の通り、白報会では病院だけでなく診療所、介護施設、デイサービスなどと連携した複合的なサービスで患者の生活を支える仕組みを提供しています。初めからこのカタチを見据えて事業を開始したということでしょうか。
白「現在のように在宅医療が日本医療の主流に移り変わっていくことは、開業前から見えていました。主流になってから動いたのでは遅いし、もうすでに誰もがやっているようなことを後追いでやるのは性に合わない。だから、誰もやっていなかった当時、着手することにしたのです。
今もまた、5年後10年後をイメージして考えています。在宅医療が一般化したあと、次に求められるのは何か・・・そうして、また中長期の計画を立てていくのです。」
―白理事長のそうした考えがカタチになったのが、近年続々と開設している「ドクターランド」(2014年10月現在は埼玉の浦和美園、千葉の松戸、船橋、幕張でオープンしている)。
大型商業施設の中に開設され、地域に密着した身近な雰囲気で診療を受けることができる、これまでの医療施設と比べてずっとカジュアルなイメージを持った診療所である「ドクターランド」は、在宅医療と併せて、今、白報会が力を入れて進めている事業の1つです。
大型商業施設の中に開設されている「ドクターランド」。
2014年10月時点で4事業所を展開しており、今後も順次拡大予定。
医療者でありながら、敏腕な経営者としての側面も
―白理事長と話していると、医療者というより独立起業家のような印象を強く受けました。どこでその経営感覚を身につけられたのでしょう?
白「そうですか(笑)。父が工場経営をしていたので、影響を受けているのでしょうね。白報会をつくる以前は大学病院の勤務医でしたが、その当時から独立しようという意思は持っていました。」
―病院経営、診療所の開設、在宅医療サービス体制の構築・・・といったようなプロセスの青写真が、その当時からあったということですか?
白「『何が社会から求められているか』とか『まだ誰もやっていないことは何か』というのは、時期によって変化しますよね。もちろん当時は当時のビジョンがありましたが、細かく具体的に考えているというよりは、長期的に見てやるべきことを捉えていく、という感じです。その時期その時期で、自分が最も興味を持った『誰もやっていないこと』にチャレンジしているんです。」
介護施設、美容クリニック…多岐に渡る事業展開も、「ゴールは無い」
―今は介護福祉施設の運営も推進されているんですね。
白「老人ホーム『幸楽園』ですね。現在は5事業所を運営しています。
先ほど言ったとおり、在宅医療では多業種の総合的な連携が必要ですから、福祉施設運営は今後も継続していく予定です。ただ、施設数をがむしゃらに増やすのではなく、入居率の向上と維持にこだわっています。
将来を考えると、老人ホームは競合がさらに増えて経営環境が厳しくなる。その中で、利用者様達の要望に応えるサービスを提供しながら生き残っていくために必要なのは、施設の数を増やすことではない。施設を自前で運営しサービスの拡充を図ることで、利用者様にご満足いただける環境を提供する、ということが最重要課題なのです。
そのために様々な戦略を立てて実行しており、今は非常に高い入居率を実現する、つまり利用者様からのニーズにお応えすることができています。」
―さらに最近では、美容治療の分野にも進出されたとか。これも『まだ誰もやっていない』からでしょうか?
白「ははは(笑)、その通りです。やっぱりそれが、チャレンジ意欲をかきたてられる理由なのでしょうね。
我々が運営している『レーザークリニックBIHAKU』は、レーザーを使った皮膚の治療(肝斑やシミ、くすみなどの色ムラの改善)を行う施設です。池袋で開設しました。
美容にはもともと関心があり、ちょっとした機会でこの分野にも進出することができまして。どうやって仕掛けていこうかと検討しているところ、『仕事の合間や会社帰りに寄り道して、短時間で美容』というコンセプトって、ニーズはあるだろうけど誰もやってないな、と気づき、
このコンセプト実現への第一歩として、『BIHAKU』をオープンさせたというわけです。」
―手広く、様々な事業展開をされている白報会において、白理事長が目指されている『ゴール』とは何なのでしょうか?
白「それ、本当によく聞かれるんですけどね(笑)。ゴールって、無いんですよ。
自分が仕事人生を終えるときに『これだけ社会に貢献できた』とか『社会が望むものに、これだけ応えることができた』という達成感を得ることはできると思うんですけど、それは結果としてそうなったということですから、ゴールとは違いますよね。
私はただ、その時代時代に合った、社会が求めているものをつくり、提供していこうとしているだけです。それでいいんだと思います。」
―『誰もやっていないこと』という、ご自身が一番”熱く”なれるポイントを見出すために、何か意識していることはありますか?
白「あまり意識していることはありませんが、しいて言うなら、すべてを『患者様や利用者様が何を求めているのか』という視点で考える、ということでしょう。
我々が自分達だけの視点で『こんなサービスつくりました』と言って、患者様や利用者様に無理に合わせてもらうのでは、上手くいかない。患者様、利用者様、そのご家族の目線に立って、どんな施設やサービスであれば、より深くご満足いただけるか。
これは職員にもよく話すんですが、『世のため人のためになることをやれよ』と。それを追求し続けていくと、おのずと『誰もやっていないサービス』のカタチが見えてくるんです。」
―まさに医療者・経営者として事業を推進されている白理事長ならではの言葉ですね! ほかにチャレンジしたいと考えている分野はありますか?
白「いろいろありますよ(笑)。中でも今は、地域医療をやってみたいと思っています。昔から地方の医療には興味があって。この分野でも、誰も実現できていないことが多くあるのでチャレンジしてみたいですね。
グループの規模も次第に大きくなっており、今後我々ができることが増えていくと同時に、より大きな社会的責任を負わなくてはなりません。そのために、浮足立った計画ではなく盤石な基盤づくりをしながら、次のチャレンジに向けたイメージを膨らませ続けていこうと、そう思っています。」
―時代が動けば、『誰もやっていないこと』は次々と生まれてくる。それを『世のため人のため』という信念と持ち前の絶妙な感度で掘り起こし、『どうすれば上手くいくか』をチャレンジの中で体現していく。
白理事長がこうした想いを常に持ち続け、既存の医療の枠組みに捉われず、『社会に求められているもの』に応えようとし続けているからこそ、この変化の激しい現代において、白報会が先進者であり続けることができるのかもしれない。
医療法人 白報会グループ 公式ホームページ