「行動することで、自分を、世界を変えることができる」株式会社ユニバーサルスタイル代表 初瀬勇輔さんにインタビュー!

中心視野を失い、文字や人の顔の判別が困難になった初瀬さん。柔道では目よりも体の反射で動くのだそう。

 

 

 

こんにちは。メディウェルギャラクシーの安部です。

 

 

 

人通りで賑わう午後の銀座。とあるビルの一室に社屋を構える、株式会社ユニバーサルスタイルを訪問しました。ドアを開け、緊張の面持ちで部屋に入った私を穏やかな様子で席へと案内してくれたのは、同社代表の初瀬 勇輔さん。

 

 

 

初瀬さんは学生時代に緑内障を患い、今も中心視野を失ったまま、文字や人の顔を見るのが困難な状態です。

 

 

 

初瀬「視覚障がいを持った当時は、本当に心まで闇の中に沈んでしまったんですけれど・・・自分が行動することで、光を見出すことができました。」

 

 

 

初瀬さんは障がいを持った後、全日本視覚障害者柔道大会の90kg級に出場し、優勝。その後は同大会で7連覇の快挙を成し遂げ、さらに階級を81kg級に移行してからも2連覇という、圧倒的な成績を残しています。

 

 

 

その一方で2011年、障がい者の就職・転職支援を主事業とする「株式会社ユニバーサルスタイル」を設立し、独立しました。

 

 

 

『障がい者の仕事をつくる仕事』がしたい―オンリーワンの対応力で、障がい者就労の裾野を広げていく。

 

 

―3年前に起業されたということですが、『障がい者の就職・転職支援』を事業の柱に置こうと考えられた経緯についてお聞かせください。

 

 

 

初瀬「障がい者の就職って、みなさんの想像以上に厳しいものなんです。私は障がいを持った後に就活を始めたのですが、100社以上受けても面接まで進むことができたのは2社だけでした。何度も応募を繰り返す中で、『障がい者の方々に仕事をつくる仕事』がしたい!という想いがすごく強くなってきて。漠然と、自分で会社をつくるしかないかなあ、と思い始めていました。

 

 

 

その後、面接を受けた2社のうちの1社に採用していただきました。積極的に障がい者の採用も行っている企業の特例子会社です。ここが障がい者の人材紹介を行っている企業で、就活中に芽生えた自分の想いと、業務内容とがピタリとハマったんです。

 

 

 

就職した特例子会社で初瀬さんは、障がいの種類や程度もさまざまなスタッフたちと仕事を共にし、マネージャーも経験することになったそうです。そして5年間の勤務を経たのち、30歳を迎える2011年、ついに独立しました。

 

 

 

初瀬「その特例子会社ではスタッフのほとんどが障がい者。一人ひとりの障がいに応じた柔軟な勤務環境づくりなどが不可欠でした。そうした現場で培った経験を活かし『障がい者の目線に立つ』ことを徹底したサービスを提供するようにしています。何より自分が苦労したので、少しでも、同じような状況にある人の役に立ちたい。」

 

 

 

―具体的に、就職・転職支援サービスとはどういった内容になるのでしょうか?

 

 

 

初瀬「障がい者の就職と転職にあたって企業側とのマッチングを行っています。一言で障がいと言っても、その内容と程度は人によってさまざまです。私はこれまであらゆる障がいを持った方々と接してきましたし、私自身が当事者であるという立場もあり、障がい者の方々の希望や事情をちゃんと汲み取ることができます。

 

 

 

要望を聞き出して、向こうが気づかないような点もこちらからカバーして、企業側に伝えたり・・・一人ひとりに応じて、細かく対応しています。

 

 

 

また、企業に対して障がい者雇用に関するコンサルティングも行っています。意外と見落としがちなんですが、企業も障がい者雇用のことを十分に理解できているわけではない、というケースが多いのです。

 

 

 

採用予定者にはどんな業務内容が適しているのか、どういったサポートが必要なのか、そのサポート要件を正確に引き出すにはどんな事前のすり合わせが必要になるのか・・・などですね。」

 

 

 

―個々の案件ごとに、非常にきめ細かな対応をされるのですね。

 

 

 

初瀬「障がい者が働いている現場での勤務経験があって、働く側と雇う側の事情をそれぞれ理解している。さらに、自分自身が当事者である。これが私と、そしてユニバーサルスタイルが持っているオンリーワンの強みだと考えています。」

 

 

 

―就職支援サービスを受けるための流れを教えてください。

 

 

 

初瀬「まずは弊社のサービスに登録していただいた後、お仕事のご希望・障がいについての状況・ご希望される配慮事項などをお伺いした上で、その内容に沿うお仕事をご紹介いたします。また、選考に進んだ段階では面接時の補助などもいたします。

 

 

なお、これらのサービスはすべて無料です。採用が成立した段階で、企業から報酬をいただいているためです。まずは何でもご相談いただければと思いますね。」

 

 

午後の日が差し込む明るいオフィスにて

デスクに向かって仕事をこなす姿はビジネスマンそのもの。

PCから流れる音声によって、事務処理を行っている。

 

 

1アクションが全てを変えた。自分を支えてくれた「柔道」と「仲間」

 

 

―「起業」についてお聞かせください。障がいを持つ以前から、独立しようというイメージはあったんですか?

 

 

 

初瀬「いえ・・・それ以前から志していたというわけではないですね。

 

 

 

私は学生時代、緑内障という病気で次第に視野が狭くなり、文字や人の顔を見るのが困難になりました。何もかもに絶望し、途方に暮れていた頃・・・ちょうどアテネでオリンピックをやっていた時期でしたね。周囲で支えてくれていた人の『柔道、やってみれば?』という言葉がキッカケで、『視覚障がい者柔道』の大会に出場することにしたんです。

 

 

 

道着に袖を通して相手と組み合うと、目が不自由でも、身体が覚えているんですよね(笑)。初出場で、優勝を決めることができました。

 

 

 

そのとき皇太子殿下に声を掛けていただいて・・・感極まるものがあったというか。それに加え、この優勝でフェスピック(アジアおよび太平洋地域の障害者スポーツの総合競技大会)の日本代表にも内定しました。

 

 

 

この出来事が、自分の見えている世界を大きく変化させる転機になりました。

 

 

 

大会前と後とで、私自身は何も変わっていない。目も悪いままだし、柔道が飛躍的に強くなったとかでもない。ただ、行動しただけ。でもその1アクションで、世界を変えることができたんです。

 

 

その後、就活で困難に直面したので『こんな現状を何とかしたい』という、次のアクションへの意思が芽生え、それが起業につながったというわけです。」

 

 

 

―視覚障がいや就職難という状況からの挑戦、相当な決意があったのだと思います。

 

 

 

初瀬「自分一人では、実行できなかったでしょうね。自分で言うのも何ですが、周りの仲間たちにはめちゃくちゃ恵まれてます(笑)。みなさんの支えあっての挑戦、そして今だと思っています。」

 

 

 

―では、次に起こしてみたいと考えているアクションは?

 

 

 

初瀬「まだ計画段階ですが、障がい者の起業支援にも取り組みたい。私と同じように、障がいを持ちながらも独立して業を営むという希望を持たれている方は多くいますから。自分も多くの成功と失敗を経験しているので、後に続く人たちの助けになりたいという想いはありますね。」

 

 

 

前職の経験も活かし、あらゆる障がい者との関わり方を身につけているという初瀬さん。今日もユーザーへの対応に走る

インタビューのすぐ後には次のアポイントがあるという。

忙しい中の合間を縫って、丁寧に対応してくれた。

 

 

起業しても「柔道家」。パラリンピック出場を目指し、仕事の合間に稽古に励む。

 

 

初瀬さんの人生を語る上で欠かせない「柔道」。今ももちろん選手として、経営と二足のわらじを履いて両立しています。

 

 

 

初瀬「アジアの大会では、これまでにフェスピック、広州アジアパラ競技大会で二連覇を成し遂げました。リオデジャネイロパラリンピックも、もちろん出たい。世界大会では勝てない試合が多いですからね、いい結果を出したいです。そのためにとことん、技を磨いていかないと、と。まだまだ現役で続けていきますよ(笑)。」

 

 

 

―世界の選手と戦ってみて、どうですか? また、目標として考えていることはありますか?

 

 

 

初瀬「世界の壁は高い、というのが実感です。強いですよ。どんどんと優秀な選手が輩出されている。

 

 

 

そんな選手たちと渡り合っていくために課題はいろいろあるんですが、最たるものは2つあります。1つは、稽古時間の確保ですね。やはり仕事との兼ね合いがありますから以前より難しくはなってきました。けれどここは意識して、きちんと締めないといけませんね。

 

 

 

もう一つは、心構えを整えるということです。勝ち続けることで、以前よりも心にどこか油断が生じている。無意識に『失敗したくない』『チャレンジしたくない』という発想で組み合ってしまい、そのスキに入り込まれて、あっさり敗けちゃう・・・ということがないように、気合を入れ直してます。やはり前のめりな気持ちを持って、がむしゃらに『勝ちたい!』と思ってかからないと、いい試合はできなくなりますから。

 

 

 

当面の目標は、アジアパラ競技大会で金を獲ること、そして2016年のリオデジャネイロパラリンピックに出場すること! これです。」

 

 

 

―ありがとうございます。

 

 

では最後に、メディウェルギャラクシーをご覧になっている方に向けて、メッセージをお願いします。

 

 

 

初瀬「医療・福祉の仕事の現場や、患者・当事者の方々にも、いろいろなことがあると思います。楽しいことや充実することばかりではなく、辛くて苦しいときなども。

 

 

 

けれど、私がそうであったように、苦しい局面に置かれていても行動一つで自分の人生は変えることができます。日々の中で迷ったり踏みとどまったりしたとき、勇気を出して一歩を踏み出し、行動してほしいと思います。」

 

 

 

株式会社ユニバーサルスタイル公式サイト

http://www.universalstyle.co.jp/

 

 

 


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