日本の技術力を未来へつなげるプロジェクト。「三機関連携事業 産業創出実践部門 アシスティブテクノロジー領域」浜先生・清田先生にインタビュー

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こんにちは。メディウェルギャラクシーの安部です。

 

 

 

今、長岡技術科学大学と豊橋技術科学大学、そして国立高等専門学校機構(高専機構)の三機関が連携して、さまざまな分野でのイノベーションと技術者の育成を図るプロジェクトが推進されています。

 

 

 

以前から親交の深かった両大学と高専機構が、日本の技術の未来を担う若い世代の技術者を育てていくために、文部科学省「国立大学改革強化推進事業」の一つとしてスタートすることになりました。

 

 

 

 今回は、本プロジェクトのうち医療や福祉に関する技術開発に特化した「産業創出実践部門 アシスティブテクノロジー領域」のリーダーである、函館高専の浜先生と熊本高専の清田先生の両名に、お話を伺いました。

 

 

 

「暮らしやすさ」を支援する技術、アシスティブテクノロジー

 

 

 

―そもそも「アシスティブテクノロジー」とは何を指すのですか?ちょっと聞きなれない言葉なのですが・・・

 

 

 

「海外ではわりと一般的な名称ですが、日本ではまだまだ耳馴染みがないですよね(笑)。

 

 

 

アシスティブテクノロジー(以下AT)とは、日々の暮らしに何らかの不自由さを持っている人たちに対して『暮らしやすい生活』を支援する技術全般のことを指します。今回のプロジェクトがきっかけとなって、この言葉もより広く知られることになればと思います。」

 

 

 

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函館高専の浜先生。高専で生徒たちに向けた技術教育に励む傍ら、本事業へも熱心に取り組んでいる。

 

 

 

 ―プロジェクトはどのように進められているのでしょうか?また、お二人の役割は?

 

 

 

 「本事業は、もともと高専機構との関係が深かった長岡技術科学大学・豊橋技術科学大学と連携し、国の採択を受けてスタートしました。

 

 

 

未来のスーパー技術者の育成、そしてAT分野におけるイノベーション。この二本柱を軸に、進められています。現在はそれをもとに4つのワーキンググループ(WG)に分けた体制を取っています。

 

 

【WG1】特別支援・教育学習支援・・・支援を要する児童・生徒への学習支援機器の開発。従来行っていた、iPadなどを活用するための訓練アプリや絵合わせアプリなどを本WGを通じてさらにブラッシュアップしていく。

 

 【WG2】高齢者・障がい者支援(身体活動支援)・・・車イスなどの歩行支援機器や、介護ロボット、視覚聴覚支援機器などの開発。

 

【WG3】医用・感性情報インターフェース支援・・・生体情報計測・処理、脳情報計測脳情報計測・処理などの開発。

 

【WG4】ATスーパー技術者育成支援・・・【1】~【3】を通じた技術者の育成

 

 

 

・・・といった形で、WGごとに進められています。

 

 

 

私はパワーアシスト・・・たとえば車イスで、斜面であっても平面と同じ力で操縦できる技術や、筋力が弱った方をアシストする機器、盲導犬のようなロボットなどについて、研究開発をしておりました。今回のATでは高専が積極的に関われる分野ということもあって、今はリーダーという立場でプロジェクトを推進しています。」

 

 

 

清田「私はもともと、障がいを持っている方々の自立支援、読み書きの支援ツールを開発していました。そこから派生して、教育現場において、特別支援を要する生徒を対象とした教育支援アプリなどの開発を行っています。浜先生と同様、この事業に自分の経験をもって貢献できるというところから、同じくリーダーとして進めています。」

 

 

 

―今もプロジェクトは進行中だと思いますが、技術者の育成ということで、高専の学生を対象にしているわけですよね? どういった形で参画するんですか?

 

 

 

「学生の参画の仕方について、一例をご紹介します」。

 

 

 

清田「基本的にATは、福祉機器や介護用品などのプロダクト(製品)を通じて、世に出て行きます。しかし、人によって障がいの内容はさまざまです。よって、こうしたプロダクトの理想は、一人ひとりに対してカスタマイズができる、ということなのですが・・・そうなると、どうしても量産には向かない。さらに、カスタマイズ可能なオーダーメイド仕様だと、価格も跳ね上がってしまう。

 

 

 

そこで、一つのプロダクトを『標準部分』と『カスタマイズ部分』に分けます。だいたい8割程度が標準部分・・・車イスで言えば、フレームや車軸など、誰にとっても共通の仕様で問題ない部分ですね。そして残り2割が、個人に合わせたカスタマイズ可能な部分。

 

 

 

この2割の設計開発に、高専の学生がアイデアを出したり、開発に参加するなどといった形で、参画していきます。

 

 

 

ここは量産に向かない部分なので、企業で実施するには難しく、高専だからこそ可能といえる発想なのです。」

 

 

 

清田「さらに、製品化後のアフターケアも充実した体制を取ることができます。なぜなら、高専機構は全国にある高専の取りまとめをしている団体だからです。全国の高専が窓口となり、ユーザーはアフターケアを受けることができるため、最終的な市販は企業への委託を前提にしてはおりますが、これまでよりもユーザーにとっては利便性の高いプロダクト・サービスの提供ができるようになるのではないでしょうか。」

 

 

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学生も研究開発に参画し、イノベーション精神を養いながら技術を身につけてゆく。

 

 

福祉機器の制作に、指導を受けながら学生が携わる

実際に様々な数値を測り、福祉支援機器の設計を行う学生と指導する教員。

 

 

 

―プロジェクトの目標についても、お聞かせください。

 

 

 

「将来的には『技学AT研究支援センター』の設立を実現したいと思っております。

 

 

 

 

全国にある高専各校がそれぞれ地域の中心となって、地元企業や特別支援学校、施設とのネットワークを築き、ユーザーから届いた声(ニーズ)に応えられる企業とのマッチングを行う・・・こうした取り組みのコントロールタワーとしての役割を果たす、『技学AT研究支援センター』の設立こそが、本プロジェクトの一つの大きな目標です。

 

 

 

実現すれば、最小限の投資で新たな福祉機器の開発が可能になり、これまでAT分野への参入が資金的に困難だった企業などにとってもハードルが下がり、市場が活性化することでイノベーションが進むだろうと考えているのです。」

 

 

 

―壮大な計画ですね!

 

 

 

清田「さらに、このセンターには設備も備えていきたい。実験や研究、試作品の製作などを行うことができる環境があれば、企業にとって新規開発のハードルが下がるでしょう。

 

 

 

高専は、各校が同じような設備を一様に持っているのではなく、学校ごとに特徴ある設備を保有しています。それを共同研究という形で企業が自由に利用することで、産学の連携を高め企業を支援するという動きがありまして、これをセンターでも実施していきたいですね。」

 

 

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 熊本高専の清田先生。授業や研究で多忙を極め、今回の取材にも授業の合間を縫って対応してくれた。

 

 

 

 

 ―今後の動きについて教えてください。

 

 

 

「平成28年度までをプロジェクト期間としており、今はどんどんと具体的な活動へとシフトしている段階です。『プロジェクトを通じてコレを製品化するんだ』といったようなゴールも、きちんと明示できるようになってくると思っています。」

 

 

 

 清田「今は国の採択事業なので、今のうちにこの事業が資金的な意味でも自立できるように基礎を固めたいと考えています。企業とのネットワークを広げ、高専でのAT技術者育成事業を継続して行えるような体制づくりをしていきます。

 

 

 

ATに精通した技術者の輩出は、我々の重要なアウトプット要件ですしね。」

 

 

 

「ATはまだ馴染みが薄い言葉ですが、少子高齢化など我々が向き合っていかなければならない社会的な課題に対する普遍的な技術だと思います。

 

 

 

今でこそ三機関連携の一翼としてやってはおりますが、幅広くご理解を得られればと思っておりますし、また、一緒に取り組みたいと言っていただける方や企業様がいらっしゃいましたら、ぜひともご連絡をいただきたいと思います。どんどんとATの輪を広げていきたいのです。」

 

 

 

清田「『この指とまれ!』で進めていきたいですね(笑)。ご興味をもっていただけましたら、ぜひ我々にご一報いただき、取り組みに参画してほしいなと思っています。

 

 

 

ATは、技術大国日本の品質や製品力で、国内だけでなく海外にもアピールできる大きな強みに育てることができると考えています。

 

 

 

世の中のいろいろなニーズを集め、それに応えるイノベーションを、より多くの人たちの協力のもとで生み出していきたいですね。」

 

 

 


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